消防法の解説(第八条~第九条の四)

解説の本文は括弧部分を取り除いて読みやすくしております。全文については消防法一覧を参照してください。
※また割愛している部分もあるので要約されている事を忘れないようにしてください。

目次
  • 第八条(防火管理者)
  • 第八条の二(統括防火管理者)
  • 第八条の二の二(防火対象物の点検及び報告)
  • 第八条の二の三(防火対象物の点検及び報告の特例)
  • 第八条の二の四(避難上必要な施設等の管理)
  • 第八条の二の五(自衛消防組織)
  • 第八条の三(防炎対象物品の防炎性能)
  • 第九条(火を使用する設備、器具等に対する規制)
  • 第九条の二(住宅用防災機器)
  • 第九条の三(圧縮アセチレンガス等の貯蔵・取扱いの届出)
  • 第九条の四(指定数量未満の危険物等の貯蔵・取扱いの基準等)
  • 消防法第八条(防火管理者)

    本文

    学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、複合用途防火対象物その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
     ② 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
     ③ 消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
     ④ 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
     ⑤ 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。

    解説

    第一項

    今回は少し長くなりますがご了承ください。
    会社やお店の代表になる方には、最低限の知識として知っていただきたいのでよろしくお願いいたします。
    この法令では、ある一定の規模(不特定多数の人が出入りするなど)の建物には火災予防等のために防火管理者を置く事を義務付け、その職務、その選任及び解任の届出等について規定されています。
    この防火管理者を立てる「人」による火災予防体制は昔から存在し、その後法改正を繰り返して現在まで続いている重要度が高いものでもあります。

    続いて、選任単位についてです。
    ざっくり言うと、
    防火管理者は建物に1人、テナント毎に1人必要になります。 ← 意外と知らない人が多いです。(もちろん該当する建物のみです)

    考え方としては、
    自社ビル等では所有者も占有者も同じ場合が多いので防火管理者は建物で一人でも大丈夫です。(マスターリースの場合とか)
    テナントは基本的に建物所有者と賃貸契約を交わしており、その借りている部分は基本的にテナントに責任がある場合が多いです。
    ただ廊下やエントランス等は所有者が責任をもつので、共有部分は所有者等から防火管理者を、テナント占有部はテナントから防火管理者を出すことになります。

    建物の所有者だけがやればいいと思っている人が多いので注意しましょう。
    ただ、防火管理体制は各建物や事業所の実情によってそれぞれなので不安な面や特例的なものを認めてもらうには消防署に相談するのがいいと思います。

    第二項

    第二項では、防火管理者を選任及び解任した場合は、すぐに消防署に届出をする義務について規定されています。

    第三項

    第三項では、防火管理者の選任義務があるにもかかわらず、選任されていない場合は、消防長または消防署長は防火管理者を選任するように命ずることができると規定されています。

    第四項

    第四項では、消防計画通りに管理等が行われていなかったり、防火管理者の業務が不適正な場合に、消防長または消防署長が必要な措置を講ずるように命ずることができると規定されています。

    第五項

    第五項では、命令を行なった際は第五条第三項と第四項を準用するように規定されています。

    第八条の二(統括防火管理者)

    本文

    高層建築物その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
    ② 統括防火管理者は、前項の規定により同項の防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行う場合において必要があると認めるときは、同項の権原を有する者が前条第一項の規定によりその権原に属する当該防火対象物の部分ごとに定めた同項の防火管理者に対し、当該業務の実施のために必要な措置を講ずることを指示することができる。
    ③ 前条第一項の規定により前項に規定する防火管理者が作成する消防計画は、第一項の規定により統括防火管理者が作成する防火対象物の全体についての消防計画に適合するものでなければならない。
    ④ 第一項の権原を有する者は、同項の規定により統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
    ⑤ 消防長又は消防署長は、第一項の防火対象物について統括防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により統括防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
    ⑥ 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物の全体について統括防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
    ⑦ 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。

    解説

    第一項

    この法令は、管理について権原が分かれている高層建築物、地下街等において統括防火管理者を選任し、全体の消防計画を定めることについて規定されたものです。

    統括防火管理制度は、
    火災時の混乱や惨事を未然に防ぐために、建物内の複数の管理権原者の協議によって統括防火管理者を選任し、一体的な防火管理を行うために全体の消防計画を定め、それに基づき全体の訓練や防火管理の業務を行うこととされています。

    簡単にまとめると、
    テナント毎に出している防火管理者の中で、それらをまとめるリーダーが統括防火管理者です。
    また、その統括防火管理者が定める消防計画が全体の消防計画です。
      ↑  消防計画と全体の消防計画は別物です!!
    だから統括防火管理者は協議して決める必要があるんですね。

    建物の防火管理は、火災に対して同一の運命である以上、一体的に行われることが最も有効であることは言うまでもないと思います。
    しかし近年雑居ビルが増え、管理体制が複雑化し、その被害も増えている事が、この法令が新設された背景にあると思います。(元々は共同防火管理制度というものでしたが、平成26年から統括防火管理者制度に変わりました)

    ちなみに統括防火管理者を選任する義務があるものは、
     ①高層建築物で、その管理について権原が分かれているもの
     ②その他政令で定める防火対象物でらその管理について権原が分かれているもの
     ③地下街でその管理について権原が分かれているもののうち消防長又は消防署長が指定するもの

    上記の3つであり、これらには統括防火管理者が必要となります。(②は後に解説します)
    これらは、管理系統が多くに分かれることでら火災の際に惨事を招く恐れが大きいと認められるからだと考えられます。

    参考程度に、
    高層建築物とは高さ31mを超える建物のことです。
    建築では高さ31mを超える建物には、非常用エレベーター、排煙設備等について特別な規制があります。
    また、消防では階数が11階(約31mぐらいが多い)以上から火災予防上厳しい規制があります。

    第二項

    第二項では、統括防火管理者は防火管理上必要な業務を行う場合に、同建物の防火管理者に必要な措置を指示することができると規程されています。

    第三項

    第三項では、テナント毎に作成する消防計画と建物の全体の消防計画は内容が適合するものにしなければならないと規程されています。

    第四項

    第四項では、統括防火管理者を選任及び解任した場合は、すぐに消防署に届出をする義務について規定されています。

    第五項

    第五項では、統括防火管理者の選任義務があるにもかかわらず、選任されていない場合は、消防長または消防署長は統括防火管理者を選任するように命ずることができると規定されています。

    第六項

    第六項では、消防計画通りに管理等が行われていなかったり、防火管理者の業務が不適正な場合に、消防長または消防署長が必要な措置を講ずるように命ずることができると規定されています。

    第七項

    第七項では、命令を行なった際は第五条第三項と第四項を準用するように規定されています。

    第八条の二の二(防火対象物の点検及び報告)

    本文

    第八条第一項の防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、定期に、防火対象物における火災の予防に関する専門的知識を有する者で総務省令で定める資格を有するものに、当該防火対象物における防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の設置及び維持その他火災の予防上必要な事項がこの法律又はこの法律に基づく命令に規定する事項に関し総務省令で定める基準に適合しているかどうかを点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、第十七条の三の三の規定による点検及び報告の対象となる事項については、この限りでない。
     ② 前項の規定による点検の結果、防火対象物点検資格者により点検対象事項が点検基準に適合していると認められた防火対象物には、総務省令で定めるところにより、点検を行つた日その他総務省令で定める事項を記載した表示を付することができる。
    ③ 何人も、防火対象物に、前項に規定する場合を除くほか同項の表示を付してはならず、又は同項の表示と紛らわしい表示を付してはならない。
    ④ 消防長又は消防署長は、防火対象物で第二項の規定によらないで同項の表示が付されているもの又は同項の表示と紛らわしい表示が付されているものについて、当該防火対象物の関係者で権原を有する者に対し、当該表示を除去し、又はこれに消印を付するべきことを命ずることができる。
    ⑤ 第一項の規定は、次条第一項の認定を受けた防火対象物については、適用しない。

    解説

    第一項

    この法令は、
    多数を収容する一定の用途・構造の建物の管理権原者に対して、防火対象物点検資格者による火災予防の点検を義務付け、その点検を報告することになっています。
    また、点検基準に適合しているという表示、虚偽表示の禁止、虚偽表示に対する除去または消印の命令及び特例を受けた建物の点検義務免除についても規定されています。
    近年建物の構造、用途や利用形態等が複雑・多様化している中で、防火管理者の知識だけを頼りに消防法令の適合を確保することは非常に難しいと言えます。そういった状況で、平成13年に発生した新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災を契機にこの法令が新設された背景があります。

    点検が該当となる建物は、
    政令用途(消防法施行令別表第1というものに定まっているものです。)
     (1)項〜(4)項:劇場、飲食店、物品販売店等
     (5)項イ:ホテル等
     (6)項:病院、老人ホーム、保育園等
     (9)項イ:サウナ付き風呂、岩盤浴等
     (16)項イ:特定複合用途対象物
     (16の2)項:地下街又は準地下街  のうち、
     ①収容人員が300人以上
     ②上記の政令用途が避難階以外(1.2階は除く)にあり、そこから避難階までの直通階段が1つしかないものが該当になります。
     ※避難階段が屋外階段の場合は非該当  

    この法令は建物が該当になると、その建物に入っているテナント全てが該当となります。

    また防火対象物点検の該当、非該当の判断が個人で難しい場合は消防署に相談するのが良いかもしれませんね。
    専門の業者に相談しても、非該当なのに点検しようとしてくる可能性もあるので。
    第二項では、点検の結果が点検基準に適合している場合に、それを表示できると規定されています。
    利用者等にわかりやすく情報提供するのが目的となっています。

    第三項

    第三項では、点検の結果が点検基準に適合していない場合は、前項の表示及び、これと紛らわしい表示を禁止する規程になります。

    第四項

    第四項では、前項の虚偽表示、紛らわしい表示等に対しての除去または消印の命令について規定されています。

    第五項

    第五項では、次条で解説しますが、特例を受けた場合は、点検報告義務は適用されないことについて規定されています。

    第八条の二の三(防火対象物の点検及び報告の特例)

    本文

    消防長又は消防署長は、前条第一項の防火対象物であつて次の要件を満たしているものを、当該防火対象物の管理について権原を有する者の申請により、同項の規定の適用につき特例を設けるべき防火対象物として認定することができる。
     一 申請者が当該防火対象物の管理を開始した時から三年が経過していること。
     二 当該防火対象物について、次のいずれにも該当しないこと。
      イ 過去三年以内において第五条第一項、第五条の二第一項、第五条の三第一項、第八条第三項若しくは第四項、第八条の二の五第三項又は第十七条の四第一項若しくは第二項の規定による命令がされたことがあり、又はされるべき事由が現にあること。
      ロ 過去三年以内において第六項の規定による取消しを受けたことがあり、又は受けるべき事由が現にあること。
      ハ 過去三年以内において前条第一項の規定にかかわらず同項の規定による点検若しくは報告がされなかつたことがあり、又は同項の報告について虚偽の報告がされたことがあること。
      ニ 過去三年以内において前条第一項の規定による点検の結果、防火対象物点検資格者により点検対象事項が点検基準に適合していないと認められたことがあること。
     三 前号に定めるもののほか、当該防火対象物について、この法律又はこの法律に基づく命令の遵守の状況が優良なものとして総務省令で定める基準に適合するものであると認められること。
    ② 申請者は、総務省令で定めるところにより、申請書に前項の規定による認定を受けようとする防火対象物の所在地その他総務省令で定める事項を記載した書類を添えて、消防長又は消防署長に申請し、検査を受けなければならない。
    ③ 消防長又は消防署長は、第一項の規定による認定をしたとき、又は認定をしないことを決定したときは、総務省令で定めるところにより、その旨を申請者に通知しなければならない。
    ④ 第一項の規定による認定を受けた防火対象物について、次のいずれかに該当することとなつたときは、当該認定は、その効力を失う。
     一 当該認定を受けてから三年が経過したとき(当該認定を受けてから三年が経過する前に当該防火対象物について第二項の規定による申請がされている場合にあつては、前項の規定による通知があつたとき。)。
     二 当該防火対象物の管理について権原を有する者に変更があつたとき。
    ⑤ 第一項の規定による認定を受けた防火対象物について、当該防火対象物の管理について権原を有する者に変更があつたときは、当該変更前の権原を有する者は、総務省令で定めるところにより、その旨を消防長又は消防署長に届け出なければならない。
    ⑥ 消防長又は消防署長は、第一項の規定による認定を受けた防火対象物について、次のいずれかに該当するときは、当該認定を取り消さなければならない。
     一 偽りその他不正な手段により当該認定を受けたことが判明したとき。
     二 第五条第一項、第五条の二第一項、第五条の三第一項、第八条第三項若しくは第四項、第八条の二の五第三項又は第十七条の四第一項若しくは第二項の規定による命令がされたとき。
     三 第一項第三号に該当しなくなつたとき。
    ⑦ 第一項の規定による認定を受けた防火対象物には、総務省令で定めるところにより、同項の規定による認定を受けた日その他総務省令で定める事項を記載した表示を付することができる。
    ⑧ 前条第三項及び第四項の規定は、前項の表示について準用する。

    解説

    第一項

    この法令は、
    同法第八条の二の二で解説した防火対象物点検を一定の条件を満たせば、実施しない様にする特例を受けることが出来ることを定めたものになります。
    またその申請、消防による検査等の諸手続、認定の失効、認定を受けた建物の管理権原者に変更があった場合の届出、認定の取消し等が規定されています。

    一定の条件を満たせば、特例認定として最大三年間防火対象物点検を行わなくて良くなるんですが、
    その条件は、
     ・管理を開始してから三年が経過していること。
     ・過去三年間、消防法令等に違反し命令を受けたこたがなく、また受けるべき事由が現にないこと。
     ・過去三年間、防火対象物点検を実施していること。
    など簡単に挙げるとこんな感じです。他にも条件はありますが、詳しくは法文を読んでみてください。

    前の投稿でも説明しましたが、防火対象物点検が該当の建物(その建物に入居する全テナント)は毎年その点検が必要となります。
    特例認定は最大3年ですが、更新すれば何度でも特例が認められるので、ずっと行わない様にも出来ます。
    なので、該当する建物や事業所の方はぜひ考えてみて下さい。

    金谷建設有限会社では特例認定の取得もサポートさせて頂きますので、ご検討をよろしくお願いします。

    第二項

    第二項では、認定を受ける際の申請に係る手続きが規定されています。

    第三項

    第三項では、特例申請を行った相手に対して消防がその申請の可否を決定した時に申請者に通知する事を規定されています。

    第四項

    第四項では、特例認定を受けた建物等がその認定の効力を失う場合について規定されています。
     ①認定を受けてから三年が経過したとき
     ②認定を受けた防火対象物の管理権原者に変更があった場合
    上記の2点の場合、特例認定の効力が失われます。

    第五項

    第五項では、特例認定を受けた防火対象物の管理権原者に変更があった場合に、消防署へ届出を出す義務について規定されています。

    第六項

    第六項では、特例認定が取消しとなる要件について規定されています。

    第七項・第八項

    第七項・第八項では、特例認定を受けた防火対象物の表示について規定されています。

    第八条の二の四(避難上必要な施設等の管理)

    本文

    学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。

    解説

    この法令では、
    学校、病院、百貨店、ホテル等の建物の管理権原者に、避難上必要な施設の適切な維持・管理の義務について規定されています。
    不特定多数の人が出入りし、勤務する比較的火災発生の危険性が高いとされる一定の建物が該当となってます。

    従来は、同法第八条により防火管理の一環として大まかに定まっており、各市町村で火災予防条例で細かく定められられているような感じでした。
    近年の火災事例等から、これらの管理が適切でない場合に火災の被害が甚大になることから平成14年の法改正で法律上明確に規定されました
    管理する部分は次の2点、
     ①廊下や階段等の避難上必要な施設で避難に支障になる部分
     ②防火戸の閉鎖に支障になる部分
    ここに該当する部分に物件が放置されたり、または存置されないように所有者等は管理しなければならないとなっています。

    例えば、飲食店等で店内に収まりきらない荷物等を階段等に置いていたりして、その建物を利用する人の避難に支障をきたしている場合は消防法法令違反となります。

    それなら避難に支障なければいいんじゃないか?? と思われる方もいらっしゃると思います。
    たしかに避難に支障がなければこの法令違反にはならないですが、基本的に階段や共用部に物件は置けないと考えて下さい。
    ただ、あくまで基本的にです。金谷建設有限会社ではその辺も助言できると思いますので、気軽にご相談頂ければなと思います。
    たまに消防署が来て、階段等の荷物をどかして下さいねとか言われるのは一応こういった根拠等があるので、素直に対応するのが良いですね。

    第八条の二の五(自衛消防組織)

    本文

    第八条第一項の防火対象物のうち多数の者が出入するものであり、かつ、大規模なものとして政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定めるところにより、当該防火対象物に自衛消防組織を置かなければならない。
    ② 前項の権原を有する者は、同項の規定により自衛消防組織を置いたときは、遅滞なく自衛消防組織の要員の現況その他総務省令で定める事項を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。当該事項を変更したときも、同様とする。
    ③ 消防長又は消防署長は、第一項の自衛消防組織が置かれていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により自衛消防組織を置くべきことを命ずることができる。
    ④ 第五条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による命令について準用する。

    解説

    第一項

    この法令では、防火管理者の選任が義務となる大規模・高層の建物に対して自衛消防組織の設置を義務付けるとともに、自衛消防組織の要員の現況等の届出等について規定されています。
    この法令の目的は、災害発生時に相当の被害が生じる可能性がある多数の人々が利用する大規模な建物において、自衛消防力の確保・消防防災体制の強化を図ることです。

    この制度の背景として、
    近年建物が高層・深層化し、ますます複雑になっていく中で、これらの建物は収容人員が多く、災害発生時における利用者の避難誘導等の応急対応は困難になることが予想されます。また、全国で地震など災害のリスクが非常に高くなっていることもあり、大規模建物において災害発生時の応急対策を円滑に行う体制を整え、利用者の安全を確保する必要がありました。 そのため、平成19年の法改正でこの法令が義務付けられました。

    第二項

    第二項では、自衛消防組織を設置した場合、または内容を変更した場合はすぐに消防署に届出をするように規定されています。

    第三項

    第三項では、自衛消防組織を設置する義務がある建物に対して、消防署がその設置を命令することが出来る権限について規定されています。

    第四項

    第四項では、前項の命令を行う場合は同法第五条第三項及び第四項を準用すると規定されています🌟 ※割愛している部分もあるので、要約されている事を忘れないようにしてください。

    第八条の三(防炎対象物品の防炎性能)

    本文

    高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。
    ② 防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するものには、総務省令で定めるところにより、前項の防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる。
    ③ 何人も、防炎対象物品又はその材料に、前項の規定により表示を付する場合及び産業標準化法その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品又はその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるものを付する場合を除くほか、前項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。
    ④ 防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が付されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。
    ⑤ 第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が付されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。

    解説

    この法令では、高層建築物、地下街、劇場、病院、飲食店等(高層建築物と特定用途)で使用するカーテンやどん帳等に防炎性能を持たせることを義務付け、その表示方法を明確に、かつ販売時の表示等について規定されています。

    この法令の目的は、
    火災の際に、カーテン等のように垂れさがったりしているものは、それらが燃える上に火がつくと、その火がかけ上がり天井やその周辺に急速に拡大する可能性があります。
    そうなると、火災を初期のうちに消し止めることは非常に難しいと言えます。また、じゅうたん等はタバコ等の着火源となる可能性が高く、ほかの可燃物への延焼にもつながる可能性があります。
    なので、こういった製品には防炎性能をもたせることで、多数の人が利用する建物の安全性を図っています。
    防炎性能の基準、防炎対象物品は政令で詳しく定められていますので後々解説します。

    第二項

    第二項では、防炎対象物品等で防炎性能を有しているものはその旨を表示することが出来ることについて規定されています。

    第三項

    第三項では、防炎性能がないのにもかかわらずそれを有しているように表示すること、また紛らわしい表示することを禁止する事について規定されています。

    第四項

    第四項では、防炎対象物品等は防炎性能を有する旨を表示したものでなければ防炎物品として販売してはいけないと規定されています。

    第五項

    第五項では、防炎対象物品等を使用するべき建物の管理権原者は、それらに防炎性能を持たせた場合それがわかるように表示するよう規定されています。

    第九条(火を使用する設備、器具等に対する規制)

    本文

    かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。

    解説

    今回は規制について定めているもののため、この法令自体にそこまで中身はないため短めにいきます。

    この法令は、火を使用する又は使用に際し火災発生の危険性がある設備・器具等の位置や管理、取扱い等について、火災の予防のために必要な事項を市町村条例で定め、規制することが定められています。 →法令ができたときはこんな感じでした。

    それが現在は、全国的に統一的な基準を設けるために、平成13年の法改正により「政令で定める基準に従い」市町村条例で定めることとされました。

    火を使う設備と器具の違いを簡単に言うと、
    器具とは移動しても使用できるもので、設備は固定されてその場所のみで使用するものと考えていいと思います。
    飲食店等では厨房設備が必ずあると思うので、こういった法律があると覚えていていいかもしれません。
    また厨房設備の条例は、事細かく規制があるため注意が必要です。

    第九条の二(住宅用防災機器)

    本文

    住宅の用途に供される防火対象物の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準に従つて、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
    ② 住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準その他住宅における火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定める。

    解説

    第一項

    この法令は、住宅の関係者に市町村条例の基準に従い、住宅用防災機器の設置及び維持を義務付け、その設置及び維持に関する基準等の必要な事項については政令で定める基準に従い、市町村条例で定め行うことを規定されているものです。

    この法令の目的は、言うまでもないですが、住宅火災の予防と被害の軽減となります。
    住宅火災による死者数の増加から平成16年の改正で新設された法令です。
    ここでの住宅とは、戸建住宅、併用住宅、共同住宅があります。

    参考までに、
    共同住宅は政令別表第一(5)項に位置付けられており、500㎡以上で自動火災報知設備の設置が義務となりますが、自動火災報知設備が設置されている場合は住宅用防災機器の設置は必要ありません。※自動火災報知設備と住宅用防災機器は全くの別物で、基準等も異なります←同じものだと勘違いされる方がいるので。

    第二項

    第二項では、住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準等の必要な事項については政令で定める基準に従い、市町村条例で定め行うことを規定されています。

    第九条の三(圧縮アセチレンガス等の貯蔵・取扱いの届出)

    本文

    圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。ただし、船舶、自動車、航空機、鉄道又は軌道により貯蔵し、又は取り扱う場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
    ② 前項の規定は、同項の貯蔵又は取扱いを廃止する場合について準用する。

    解説

    この法令は、圧縮アセチレンガス等の非常に危険な物質で政令で定めるものを貯蔵したり、又は取り扱う場合はその旨を所轄の消防長又は消防署長に届出なければならないと規定されています。

    この法令の目的は、圧縮アセチレンガス等は非常に危険なものであり、火災予防はもちろん消防活動においても重大な支障をきたす可能性があります。
    そのため、これらの物質の所在についた届出をさせ、消防機関は火災発生の未然防止や実際の火災の場合に被害の拡大を防止するための対策を立てる目的があります。

    第二項

    第二項では、貯蔵又は取扱いを廃棄する場合も届出をすることが規定されています。

    なお、この法令には罰則があり、
    届出を怠った者は最大で罰金30万円・拘留があるので気をつけましょう。

    第九条の四(指定数量未満の危険物等の貯蔵・取扱いの基準等)

    本文

    危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量未満の危険物及びわら製品、木毛その他の物品で火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めるものその他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
    ② 指定数量未満の危険物及び指定可燃物その他指定可燃物に類する物品を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、市町村条例で定める。

    解説

    この法令は、指定数量未満の危険物、指定可燃物等の政令で定められた物品の「貯蔵及び取扱いの技術上の基準」及び「貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準」を条例で定めることを規定しています。
    『指定数量』とは、
    危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量のことです。
    この政令は危険物政令第一条の十一、危険物政令別表第三に詳しくあります。
    『指定可燃物』とは、
    わら製品、木毛その他の物品で火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めるものです。
    この政令は危険物政令第一条の十二、同令別表第四に詳しくあります。

    この法令には罰則は定まっていないのですが、
    この法令に基づく委任条例違反には、消防法第四六条により30万以下の罰金を条例で設けることが出来るので、各市町村で規程が変わってくるので気をつけてください。

       

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